貧血

透析患者さんと貧血についてのお話です。 貧血にも様々な原因がありますが、 そのうち一般に最も多いのは体の鉄分が不足する鉄欠乏性貧血です。 一方、透析患者さんにおける貧血の主な原因は腎性貧血です。 腎機能の低下に伴って腎臓で作られる『エリスロポエチン』 と呼ばれる物質の産生が低下し、骨髄における赤血球の産生が 十分に刺激されないことで腎性貧血は生じます。 腎性貧血は透析患者さんに最も高頻度で出現する合併症で、 透析患者さんのほとんどが貧血であるといっても過言ではありません。 透析患者さんは赤血球寿命が短くなるとされており、 血液回路における残血も貧血の要因になります。 また透析中抗凝固療法を行っており、 消化管出血などの出血性疾患の頻度も高いです。 さらに鉄欠乏だけでなく骨髄での鉄利用も障害しやすく、 鉄代謝障害も貧血の大きな原因となります。 クリニックでは定期的に貧血関連の項目を含めた血液検査を行っており、 透析患者さんは目標ヘモグロビン(Hb)値 10g/dl以上12g/dl未満 が推奨されています。 Hb値の低下がみられた場合鉄代謝関連の項目も同時に見ていきます。 腎性貧血には、腎臓におけるエリスロポエチン分泌不足を補うために 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による薬物療法が中心となります。 また、あわせて食事療法や鉄剤の投与も行います。