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透析療法の違いについて②(HF)

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今回のテーマは透析療法の違いについて 前回 透析療法の違いについて①(HD)の続きになります。 血液濾過 (HF:hemofiltration) 血液濾過 (HF) は血液中の水分と共に 血液濾過器 ( ヘモフィルタ ) の細孔よりも 小さい物質 ( イオンや老廃物 ) を、 圧力をかけて 強制的に透過します ( 濾過 ) 。 細孔を透過した液は老廃物が含ま れているので破棄し、 破棄された水分を補充液として血液に 補充します。   メリット ・急激な濃度変化がないため、循環動態が安定しています。 ・透析中の血圧低下や不均衡症候群が起こりにくいです。 デメリット ・低分子物質の除去性能が圧倒的に低いです。 ( ある程度の十分な除去をするためには、大量の補充液が必要とされます。 )

透析療法の違いについて①(HD)

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  今回のテーマは透析療法の違いについて 透析療法にはさまざまな種類があり、 患者さんの病態やライフスタイルに合わせた透析療法が存在します。 血液透析 (HD) 、 血液濾過 (HF)、 血液透析濾過 (HDF) についてお話します。 血液透析 (HD:hemodialysis) 血液透析 (HD) は患者さんの血液を 血液回路に 通して水分や 老廃物を除去します。 HD は拡散という濃度勾配による物質 移動を 利用した方法です。 また水分はダイアライザ内で血液 に圧力を かけて除去しま す。   メリット ・実施施設が多いので施設の選択がしやすく、 旅行などの時に臨時で利用できる施設も多いです。 ・栄養状態の悪い患者さんにおいて AN69 膜は血液透析濾過 (HDF) と 比較してアルブミンの喪失が少なく、栄養状態を悪化させるリスクが少ないです。 デメリット ・ HDF と比べ小分子量物質の除去効率は劣りませんが、 中・大分子量物質の除去効率は劣ることが多いです。

MIA症候群

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今回のテーマはMIA症候群について  MIA 症候群って何? 栄養障害 ( m alnutrition) と慢性炎症 ( i nflammation) が 互いに影響しあってアテローム性動脈硬化 ( a therosclerosis) を促進させ、 虚血性心疾患や脳血管障害などの心血管病を引き起こします。 このような病態を MIA 症候群といい、合併症による透析患者さんの 死亡率上昇に関与する重要な合併症です。 MIA 症候群の要因 透析患者さんは様々な原因で、栄養障害と慢性炎症を来します。 腎不全や尿毒症、透析膜の生体適合性不良などによる慢性炎症は、 蛋白質の異化亢進を促すことで栄養障害の進行を増強させ、 栄養障害は免疫力を低下させて透析液の微量な エンドトキシンなどによる 炎症を増強させます。 このように、栄養障害と慢性炎症が互いに影響しあって 動脈硬化を促進させ、虚血性心疾患や脳血管障害などの 心血管疾患を引き起こし、生命予後を悪化させるとされています。 要因の評価 慢性炎症については透析条件の見直しや透析医材の検討、 フットケアや掻痒症のケア、禁煙指導、内服薬の評価などを行います。  栄養障害については極端な蛋白制限を避け、   蛋白質量に対するリン含有量が少なくアミノ酸が摂取できる食品を多く摂り、   高リン血症による血管石灰化を予防しながら筋肉合成に必要なものを   摂取できるように、栄養士さんと相談することが大事です。

クレアチニン(Cr)②

 前回 クレアチニン(Cr)① の続きになります。 クレアチニンの正常値 男性・若年者は 12 ~ 14mg/dL 以下 女性・高齢者は 10 ~ 12mg/dL 以下 透析除去率 60% 以上 透析患者さんの場合、 男性・若年者は 12 ~ 14mg/dL 以下 、 女性・高齢者は 10 ~ 12mg/dL 以下 が基準値とされていますが、 筋肉量に応じて多少増減します。また、透析除去率は 60% 以上を目標にしています。 Cr が低下してきた場合は、筋肉量の低下が疑われます。 まれに筋肉量が減少する疾患が原因となる可能性もあります。 逆に Cr が上昇してきた時には透析効率の低下が疑われます。 しかし現在使用されているダイアライザであれば、 Cr の除去効率は問題ありません。 除去の低下よりもシャントの不良により 血液が再循環 ( 短絡 ) している可能性や体液量変化の可能性が高いと考えられます。 クレアチニンの管理 Cr は様々な影響を受けるため人によって目指す値が少しずつ違っています。 しかし、安定した透析をしていれば検査ごとに変化は大きくないのが普通です。 特別な疾患がない限り大きく変動することがないため、 月に 1 ~ 2 回検査を行い長期的にどのように変化するか見ることが大事です。

クレアチニン(Cr)①

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今回のテーマはクレアチニン (Cr) について クレアチニンとは クレアチニン (Cr) は 運動によって産生される筋肉の代謝産物 ( 老廃物 ) で 筋肉量に左右されます。筋肉は半分が蛋白質でつくられていることから、 栄養指標の一つとして用いることもできます。 Cr は分子量 113 で尿素窒素と 同じ分子量の小さい物質です。 クレアチニンでわかること Cr は 腎臓で濾過されてほぼ尿中へ排出される ため、 腎臓の機能が低下すると血清 Cr が高値を示します。 そこで透析導入前は腎機能の評価として用いられます。 ただし『維持透析ガイドライン』にも血清 Cr 濃度は加齢による筋肉量の減少、 運動などによる筋肉量過多、性差、栄養状態など腎機能以外の要因に影響されるため、 Cr ですべてがわかるわけではありません。

ダイアライザの機能的分類について②

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ダイアライザの分類 ダイアライザの分類には血液透析器 Ⅰ型、Ⅱ型、 S 型 という分類があります。 Ⅰ型Ⅱ型に関してはβ2ミクログロブリンのクリアランス値 ( 除去性能 )70mL/ 分、 アルブミンふるい係数 0.03 を境として 蛋白非透過型 / 低透過型 (a 型 ) と 蛋白透過型 (b 型 ) の4型に分類されます。 S 型は特別な機能を持つもの定義され、 生体適合性に優れる、 吸着によって溶質除去できる、抗炎症性、抗酸化性を有するとされています。 現在 PMMA 膜が S 型に分類されています。 ダイアライザの選択 患者さんの血清アルブミン値、食事の状態、体重変動など、 患者さんの栄養状態に応じて蛋白非透過型 / 低透過型 (a 型 ) もしくは 蛋白透過型 (b 型 ) を使用するか判断します。 検査データのみならず、痒み、関節痛なども膜素材や型を決定する要素となります。 また透析膜によるアレルギー様反応 ( 血圧低下、発熱、血小板減少 ) も 少なからずあります。そのような場合は他の膜素材や PVP の含まれていないダイアライザへの変更を検討します。

ダイアライザの機能的分類について①

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今回のテーマは ダイアライザの機能的分類について ダイアライザは色々 ダイアライザは中空糸型と積層型では形が違い、 見た目は似ていてもサイズや膜の素材にも様々なものがあります。 そして、難しい話になりますが機能によって分類されており、 今回はそんな分類のお話です。 血液透析は拡散と濾過の原理により尿毒素と過剰な水分を除去するため、 透析膜には高い溶質透過性 ( 尿毒素の通りやすさ ) と透水性 ( 水を通す性質 ) が 求められるとともに、十分な機械的強度と生体に悪い影響や刺激を与えないこと ( 生体適合性 ) も必要とされます。 ダイアライザの材質 ダイアライザの材質は、 石油由来の合成高分子系膜 と 天然素材のセルロース系膜 とに大別されます。 〇合成高分子膜 低分子蛋白の除去に優れ、生体適合性が良いとされています。 最も使用されているものはポリスルフォン (PS) 膜で、 PS 膜は疎水性のため水になじみやすくする ( 親水化剤 ) ポリビニルピロリドン (PVP) が 添加されています。また多くの高分子系膜は 合成材料のビスフェノール A(BPA) を含んでいます。  ポリスルフォン (PS) 膜  ポリエーテルスルフォン (PES) 膜  ポリエステル系ポリーマーアロイ (PEPA) 膜  ポリアクリロニトリル (PAN) 膜  ポリメチルメタクリレート (PMMA) 膜 など 〇セルロース系膜 小分子物質の除去に優れるが、 PS 系膜に比べて低分子蛋白の除去に劣るとされています。 セルロース系膜には PVP や BPA は含まれていません。 現在市販されているのはセルローストリアセテート (CTA) 膜のみで、 親水性で抗血栓性に優れます。近年では CTA 膜を改良し高い蛋白分画特性と 濾過性能を持つ ATA 膜というものもできています。   続きはダイアライザの機能的分類について②へ

透析とプライミングについて

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今回のテーマは透析とプライミングについて  プライミングとは?  透析室では臨床工学技士が透析の準備をするため、 ダイアライザや回路を叩いている場面を見たことがあると思います。 透析を始める準備を プライミング といい、 ダイアライザと血液回路の 洗浄、充填 を行います。 ダイアライザや血液回路内に不純物や空気が入っていると、 患者さんの血管に入ってしまうため、 内部を液体で満たしてあげる必要があります。 中の液体は血液と触れるため、 生理食塩液や透析液などの等張液 ( 浸透圧が血液と同じで溶血が起こらない液体 ) を使用します。 プライミングが十分でないと   血液透析を行う際に血液はダイアライザや血液回路に触れるため、 内部に不純物や薬剤などの溶出物があると、 患者さんの血管から体内に入り 免疫反応を活性化 させます。 また、血管に大量の空気が入ると空気によって血管の閉塞が起こり、 空気塞栓 とよばれる状態になります。 ( 空気の量が 10mL 以下であればリスクはないとされています ) 血液回路には可塑剤として、フタル酸ジ -2- エチルヘキシル (DEHP) や トリ -2- エチルヘキシルトルメリテート (TOTM) が含まれているものがあります。 ダイアライザには充填液として滅菌水、保護剤としてグリセリン、 合成材料のビスフェノール A(BPA) 、 親水化剤のポリビニルピロリドン (PVP) などが 含まれています。 不純物や溶出物の除去

透析液の作成

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今回のテーマは透析液の作成です ~透析液の作り方~ 透析液は濃縮された透析液原液と透析用水を A 液、 B 液、 RO 水= 1:1.26:32.74 の希釈倍率で混合し、希釈して作成します。 A 液には電解質とブドウ糖、 B 液には炭酸水素ナトリウムが含まれています。 A 液と B 液を直接混合すると、炭酸カルシウムの沈殿が生成されるため、希釈してから混合します。   ~透析液の内容~ 透析治療では透析膜 ( 半透膜 ) を介して、透析液と血液の間で拡散によって老廃物の除去や電解質のバランスを調節します。 カリウムやマグネシウムなどの電解質は拡散で除去できるように、透析液濃度は血中濃度より低く設定されています。ブドウ糖は適度な濃度勾配を維持して、過剰に除去されないように添加されています。ナトリウムやクロールは血液と透析液でほぼ同じ濃度に設定されています。逆にカルシウムや重炭酸は透析液中の濃度は血液中より高めに設定されています。 電解質 血清値 (mEq/L) 透析液濃度 (mEq/L) 濃度差 物質の移動 ナトリウム 135 ~ 145 138 ~ 140 ほぼ同じ濃度 ナトリウムは除水と共に除去される クロール 98 ~ 108 110 ~ 114.5 カリウム 3.5 ~ 5.0 2.0 ~ 2.3 血液より濃度が低い 血液→透析液 マグネシウム 1.8 ~ 2.6 1.0 ~ 1.2 カルシウム 2.2 ~ 2.6

水処理装置について

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今回のテーマは水処理装置について 透析用水とは? 透析は大量の透析液を使用します。 一般的に 4 時間の透析で 約 120L 程度の透析液が消費されます。 透析液は高濃度の原液や粉末製剤と 水道水 や 井戸水 を用いて希釈・溶解し作製します。 しかし水道水には消毒用の塩素や細菌、エンドトキシンなどの生物学的汚染物質のほか、 様々な物質が含まれています。 そのため透析療法に使用するためには水処理装置で清浄化する必要があります。   ~水道水に含まれるもの ( 体への影響 ) ~ 〇消毒用塩素…溶血 〇細菌・エンドトキシン…発熱や慢性炎症を引き起こす 〇微量元素 ( 特にアルミニウム ) …蓄積による障害 水処理装置の中はどうなっている? では水処理装置の中ではどのような処置がされているのか見てみましょう。 ①   原水タンクからポンプで送液された原水は、一次フィルタ ( プレフィルタ ) で水中の懸濁物質や微粒子などの粗い物質が除去されます。 ②   軟水化装置で硬度成分である Ca イオン、 Mg イオンが Na イオンに変換されます。 ( 高度成分が RO 膜に析出すると処理能力が低下するため、 RO 膜で容易に除去できる Na イオンに変換します ) ③   軟水化された水は活性炭濾過装置に入り、原水中に含まれる RO 膜の劣化につながる塩素が分解され、有機物が除去されます。 ④   活性炭濾過装置からは摩耗粉、破砕粉が遊出するため、後方には二次フィルタ ( チェックフィルタ ) が設置されます。 ここまでが前処理ユニットで、 水処理装置で最も重要な RO 膜 の寿命を延ばすために設置されています。 ⑤   RO 膜は高い分離能を有していて加圧することで原水中のほとんどを除去することが可能です。 RO 水となった水は透析用水として供給されます。 ⑥   エンドトキシンカットフィルタと呼ばれ、エンドトキシンや細菌を除去します。