リンについて

リン(P)はミネラル代謝において重要な成分の一つであり、 約85%は骨に、残りの大部分は細胞内に存在しています。 そして骨や歯の成分になったり、様々な代謝、 神経伝達など生命維持に必須の存在です。 体内のリン濃度の調整は、腸管からのリン吸収や、 骨形成と骨吸収のバランス(骨代謝回転)、腎臓での排泄と再吸収で主に行われています。 腎不全の患者さんにおけるリン、カルシウム(Ca)、PTHの異常によって 引き起こされる病態を『慢性腎病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)』と呼び、 骨が脆弱になり骨折しやすくなるだけでなく、 長期的には軟部組織、特に血管の石灰化を起こして生命予後に影響を与えます。 〇高リン血症 腎不全患者さんは、腎臓で産生される活性型ビタミンDが減少し、 腎臓における排泄や再吸収の調節が困難になるため、 PTHなどの調節があっても高リンになることが多いです。 一般的に1日に約1000㎎のリンを摂取していて 約700㎎(2/3)が尿中に排泄され、約300㎎が便中に排泄されます。 しかし1回の血液透析ではリンは約800~1000mgしか除去できず、 週3回の血液透析では週に3000mgしか除去できません。 そのため、リンの摂取制限やリンの吸着薬の服用によって、 リン濃度を是正する必要があります。 〇低リン血症 低リン血症は食事摂取量、特にタンパク質摂取量が少ないと、 腸管から吸収するリンより、透析で除去されるリンが多くなり起こります。 透析患者さんは一般的に高リン血症となることが多いため、 低リン血症の時は食事摂取量自体が減少しているような、 低栄養状態が背景にあると考えられます。 リンには50%程度しか吸収されない有機リンと、90%以上が吸収される 無機リンがあります。有機リンはタンパク質に多く含まれ、 無機リンは清涼飲料水(特に着色されたもの)や食品添加物に 多く含まれていて、この無機リンの摂取量に注意が必要です。