皮膚掻痒症治療薬

 

今回のテーマは皮膚掻痒症治療薬について

 

透析患者さんと痒み

痒みは透析患者さんの皮膚合併症の一つで、透析患者さんの約7割にみられます。痒みには透析由来、皮膚異常、末梢性起因、中枢性起因の4つの要因が関与し、全身のどこにでも発症します。

 透析患者さんの皮膚掻痒は、尿毒症由来の起痒物質によって引き起こされる痒みだけでなく、皮膚の乾燥による痒みや患者さんがもともともっているアレルギーによる痒みなど、様々な病状が組み合わさって生じています。

 

皮膚掻痒症治療薬の作用

抗ヒスタミン薬

アレルギーを引き起こす抗原が体内に入ることで、肥満細胞からヒスタミンなどが遊離されます。遊離されたヒスタミンがH受容体(ヒスタミン受容体)に結合することで、アレルギー症状が発症します。抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンがH受容体に結合することを抑制します。

オピオイドκ受容体作動薬

痒みの発現に関与する神経には、内因性オピオイド受容体のμ受容体とκ受容体が存在します。μ受容体の活性化により痒みが発現し、κ受容体の活性化により痒みが抑制されます。オピオイドκ受容体作動薬は、κ受容体を活性化することで痒みを抑制します。

保湿薬

透析患者さんは皮膚への水分が低下していて、角質の水分量が低下して乾燥が起こります。乾燥が進むと皮膚バリア機能が低下して、痒みを伝達する神経(C繊維)が表皮まで伸び、痒みを感じやすくなります。保湿薬は吸湿し、角質に水分を付加します。

 

皮膚掻痒症治療薬の種類

抗ヒスタミン薬

薬剤名

一般名

特徴

レスタミンコーワ錠

ジフェンヒドラミン塩酸塩

錠剤、クリーム。閉塞隅角緑内障や、前立腺肥大症などによる尿路閉塞性疾患を有する患者には禁忌。眠気を起こすことがあり、運転を控える。抗ヒスタミン薬の中で最も眠気が強い。

ポララミン®

d-クロルフェニラミンマレイン酸塩

錠剤、散、ドライシロップ、シロップ、注。閉塞隅角緑内障や、前立腺肥大症などによる尿路閉塞性疾患を有する患者には禁忌。眠気を起こすことがあり、運転を控える。

セレスタミン®配合錠

ベタメゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩

配合錠、配合シロップ。閉塞隅角緑内障や、前立腺肥大症などによる尿路閉塞性疾患を有する患者には禁忌。眠気を起こすことがあり、運転を控える。

アタラックス®

ヒドロキシジン塩酸塩

眠気を起こすことがあり、運転を控える。

アゼプチン®

アゼラスチン塩酸塩

眠気を起こすことがあり、運転を控える。

アレグラ®

フェキソフェナジン塩酸塩

錠剤、OD錠、ドライシロップ。高齢者や合併症のある患者が使用しやすい。眠気は起こりにくいとされ、運転は可能。

アレジオン®

エピナスチン塩酸塩

錠剤、ドライシロップ。一日一回で効果を発揮。眠気を起こすことがあり、運転には注意が必要。

タリオン®

ベポタスチンベシル酸塩

錠剤、OD錠。眠気を起こすことがあり、運転には注意が必要。

アレロック®

オロパタジン塩酸塩

錠剤、OD錠、顆粒。眠気を起こすことがあり、運転を控える。

クラリチン®

ロラタジン

レディタブ錠、ドライシロップ。一日一回で効果を発揮。眠気は起こりにくいとされ、運転は可能。

デザレックス®

デスロラタジン

一日一回で効果を発揮。眠気は起こりにくいとされ、運転は可能。

ビラノア®

ビラスチン

高齢者や合併症のある患者が使用しやすい。食後の投与やグレープフルーツジュースとの併用で効果が減弱。眠気は起こりにくいとされ、運転は可能。

ルパフィン®

ルパタジンフマル酸塩

グレープフルーツジュースやアルコールとの併用によって、効果が増強。10mgでは眠気は起こりにくいとされ、運転は可能。20mgでは注意が必要。

 

オピオイドκ受容体作動薬

薬剤名

一般名

特徴

レミッチ®

ナルフラフィン塩酸塩

OD錠、カプセル。既存の治療薬で効果が不十分な場合に使用される。透析で除去されるため、十分な間隔を空ける。

 

保湿薬

薬剤名

一般名

特徴

ウレパール®

尿素

ローション、クリーム。角質融解作用がある。

ヒルドイド®

ヘパリン類似物質

クリーム、ソフト軟膏、ローション。

 

コメント