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β2ミクログロブリンについて

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  今回のテーマはβ2ミクログロブリンについて β2ミクログロブリンとは? β2ミクログロブリン は分子量 11800 の中分子領域の物質で、 透析の合併症である 透析アミロイドーシス の主要構成蛋白質であり、 透析療法で積極的に除去すべき尿毒症物質です。   β2ミクログロブリンの基準値は? β2ミクログロブリンは透析患者さんの死亡リスクに関係するとの報告もあり、 濃度が高いほど死亡リスクは増大します。 透析患者さんは最大間隔の透析前の値で 30mg/L 未満 が正常値となります。 目標値としては 25mg/L 未満 を目指します。 なお測定の頻度は『維持透析ガイドライン : 血液透析処方』にて3か月に1回程度が推奨されています。   β2ミクログロブリンを除去するには? β2ミクログロブリンを除去する方法は 拡散 が中心となります。 そのため①血流量を上げる、②膜面積を上げる、③透析時間を延ばすといった方法や、 ④β2ミクログロブリン吸着カラム ( リクセル ) の使用など適切な治療条件を設定することで値を低く抑えることが可能です。 また 血液疾患や悪性腫瘍、感染症などの病態 がある場合には、高値となることがあります。

尿素窒素(UN)について

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  今回のテーマは尿素窒素 (UN) について 尿素窒素とは? 尿素窒素 (UN) は蛋白質がエネルギーとして消費された後の老廃物で、 蛋白質摂取量によって数値が左右されます。 治療前後の尿素窒素をみると、分子量が小さい尿毒素がどれだけ除去されているかの指標となります。 尿素窒素の基準値は?   UN 濃度の基準値は週初め透析前で 60 ~ 80mg/dL 程度 です。 腎機能が低下している透析患者さんの場合、 UN 濃度の上昇は、 蛋白質摂取量の増加や異化亢進、透析不足、消化管出血などが考えられます。 一方 UN 濃度の低下は、蛋白質摂取量減少や尿量がある状態、 体液量過多、肝不全などが考えられます。 透析量の指標 透析前後の UN 濃度の変化から、数学的なモデルを用いる除去状態の代表的な指標が、 標準化透析量 (Kt/V) です。 Kt/V は体内にある尿毒素を透析で どれだけ除去できたかを示す指標の一つです。

検査のお話し シャントの日常管理⑧

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透析患者さんと鉄について

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今回のテーマは透析患者さんと鉄について 鉄 は赤血球造血などに必要な微量金属で、健康な成人の体内には 約3000~5000mgの鉄が存在し、そのうち60~70%はヘモグロビン(Hb)鉄で、 その残りの約1000mg程度は「貯蔵鉄」として肝臓や網内系に蓄えられています。 SAT 、フェリチンって何? ・TSATとは 血清鉄は トランスフェリン と呼ばれる蛋白質と結合しており、トランスフェリンの総量を 総鉄結合能(TIBC) 、血清鉄と結合していないトランスフェリンを 不飽和鉄結合能(UIBC) といいます。TIBCの中で鉄と結合している割合をトランスフェリン飽和度(TSAT)といい、 鉄動態の指標 として用いられます。 ・フェリチンとは フェリチン はほとんどの細胞内に存在する 鉄結合蛋白質 で、 トランスフェリンが運んでくる鉄を無毒化して細胞内に保存します。 鉄が必要な場合は供給して調節し、鉄不足と鉄過剰を抑える役割があります。 フェリチンは細胞内の鉄の過不足により制御されていて、 血清フェリチン値は 細胞内の貯蔵鉄の状態の指標 とされています。 鉄補充療法の開始基準 血清フェリチン値とTSATの評価はESA(赤血球造血刺激因子製剤)を投与しているかで 異なります。『 日本透析医学会 慢性腎臓病における腎性貧血治療のガイドライン 』では ESAを投与していなく、目標Hbを維持できていない患者さんは、 血清フェリチン値50ng/mL未満を基準にESA投与に先行した鉄補充療法を提案します。 ESA投与中であれば血清フェリチン値100ng/mL未満かつTSAT20%未満の場合に 鉄補充療法が推奨されています。鉄利用率が低下する病態が認められず 血清フェリチン値100ng/mL未満もしくはTSAT20%未満のいずれか1つを満たす場合には 鉄補充療法が推奨されます。  

検査のお話し シャントの日常管理⑦

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透析療法の現況について

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今回のテーマは透析療法の現況について 透析患者さんはどのくらいいて、どのような患者さんが多いのでしょうか。 日本の慢性透析療法を受けている患者さんの総数は 349700 人 です (2021 年末 ) 。 透析患者さんの数は年々増加傾向でしたが近年患者数の伸びは鈍化しています。   日本では、もともと慢性糸球体腎炎が腎臓の悪くなる原因として一番多かったのですが、食生活や栄養状態の変化とともに糖尿病患者が増加し、その合併症である 糖尿病性腎症 が 2011 年に原疾患の第 1 位になりました。第 2 位は 慢性糸球体腎炎 で、第 3 位は高齢化や高血圧などにより腎臓の血管が動脈硬化を起こして生じる 腎硬化症 となっています。糖尿病性腎症は1位になってからも上昇していますが、食事管理や治療薬の進歩などを背景に、近年は微増から横ばいを推移しています。腎硬化症は高齢化の影響で増加が続いています。 これに加えて問題なのは、透析患者さんの高齢化です。 2021 年末の透析患者さんの平均年齢は 69.67 歳で、最も割合が高い年齢層は 70 ~ 74 歳でした。透析導入患者の平均年齢も 71.09 歳と透析を始める時点で高齢となっています。 引用・参考文献 日本透析医学会統計調査委員会  わが国の慢性透析療法の現況 ( 2021 年 12 月 31 日現在)日本透析医学会 ,2021,12

レニンについて

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今回のテーマはレニンについて ◎腎臓の血圧維持の働き -レニン産生- 腎臓は レニン というホルモンを産生します。 レニン は腎臓の糸球体という部分の付近で産生されます。 レニン はアンジオテンシンを産生し、アンジオテンシンはアルドステロンの分泌を促します。この一連の経路を レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 (renin-angiotensin-aldosterone system: RAAS ) といいます。 ◎血圧を上昇させる アンジオテンシンやアルドステロンは水とNa∔の再吸収を促進し、アンジオテンシンは血管を収縮させることにより、体液量を増加させて血圧を上昇させる機能をもちます。 ◎透析患者さんの高血圧 レニン は腎臓の血流低下、交感神経刺激、原尿中の Na ∔ や Cl - 低下などの刺激によって分泌が促進されます。 通常であれば血圧上昇後は レニン 分泌が抑制され血圧上昇が続くことはありません。しかし、腎機能が低下していると調節機構がうまく働かず、高血圧になってしまいます。またアルドステロンが過剰に分泌されると体液量が増え、心臓に負荷がかかるため心不全がひき起こされます。 ◎薬による治療 透析患者さんの亢進された RAAS を阻害することは、高血圧を治療するとともに心不全を防ぐことにもなります。この機構に作用する薬が RAAS 阻害薬 で、 ACE 阻害薬と ARB( アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬 ) とレニン阻害薬があります。

検査のお話し シャントの日常管理⑥

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  検査のお話 検査のお話し   『 vascular ( バスキュラー ) access ( アクセス ) の日常管理』 VA 超音波検査の流れ VA 超音波検査は、 ① 定期検査と ② 臨時検査に分かれます。 ① 臨時検査は、閉塞、狭窄、脱血不良、静脈圧上昇などの 異常があった時。 ② 定期検査は、・血管拡張後、約1ヶ月       ・軽度異常~正常の VA は状態に 合わせて1、3、6ヶ月間隔 臨時検査の依頼があった時は・・・ ① シャントトラブルの詳細を透析室スタッフに確認する。 ② シャント側全体を触診・視診・聴診する。 ③ 当日を含め3~5回分の透析レポートと受診記録を確認する。 ④ 超音波で、機能評価、形態評価を行う。 ⑤ レポート作成する。